税務セミナーフォロー

皆様、税務セミナーにご参加いただき、ありがとうございました。税務セミナーの講師を担当させていただき、5~6年になりますが、延はご参加人数は有料セミナーにもかかわらず数百人を超えていることと思います。皆様の実務対応の参考、税務力の向上の何らかのお役に立ちましたら幸いです。

①価格調整金

 子会社との取引価格について、期末に契約に基づいた利益水準に収めるために(TNMMレンジに収まるために)価格調整金を行う取り決め(契約)について、税務上寄附金課税の対象となるかどうかという議論があります。移転価格事務運営指針3-21では、当該支払いが合理的な理由に基づくものである場合には、寄附金に該当しないとされています。つまり、財政的な支援目的で子会社に支出した場合には寄附金に該当するが、移転価格上の合理的な理由に基づき(TNMM法)、支払う場合には合理性があるため、寄附金に該当しないとされています。実務上留意が必要なのは、移転価格の考え方をすべての税務調査官がしっかりと理解しているとはいいがたく、税務調査の現場では、利益調整として指摘を受ける可能性は現実としてあるということです。保守的な税務アドバイザーの中では、価格調整金のルーツはリスクが高く、相互協議に基づく事前確認申請(APA)の場合にしか使えないと保守的な見解を示しているケースも多いようですが、移転価格の考え方や通達(事務運営要領)の考え方をきっちりと分析する限り、きちんと親子間でTNMMに基づく取り決めを契約しておき、その契約に基づく調整であれば、寄附金で課税(更正決定)されることは不合理と考えられます。一方で、移転価格の考え方がきちんと整理されていないケース(または、事前の明確な契約がないなど)での期末調整は、単なる「利益調整」として寄附金課税されるリスクは大ですので、移転価格上の正当な「利益調整」とその他の「利益調整」は紙一重であるため、事前の整理・理論構築は重要な税務論点であるといえます。

②保証料

 我が国の移転価格税制や通達上、保証料に関する明確な規定はないため、租税法律主義を重視する観点からは、保証料を取らなければ課税を受ける(更正決定を受ける)というルールはありません。一方で、第三者取引と比較した際に、保証した当事者が何のメリットもなくリスクを引き受けるとは考えにくいため、引き受けたリスク+一定のマージンを徴取しようとすることは一般的であると思われます。税法理論としては、種々の考え方がありますが、実践的な税務調査理論的な観点でいえば、税務調査で指摘を受けても明確なメリットが数字として出せない以上、進んで修正申告をする必要がない、ただし税務調査時の無用の指摘を回避するのであれば、事前に最低限度の保証料を徴収しておくのがベターという方向性になろうかと思います(保証料について、現地国で源泉徴収されるようなケースでは、外税控除の論点も生じます)。

いずれにせよ、税務調査で指摘を受けた際には、税務調査官から指摘内容に関する根拠(ロジック)をきちんと確認し、税法理論として妥当な指摘なのかをきちんと確認することが何よりも重要です