カテゴリー別アーカイブ: 税制の動向・ニュース等

海外子会社への貸付金利について(移転価格事務運営指針の改正)

昨年の6月に国税庁より公表された移転価格事務要領の改正の適用初年度が、令和5年4月1日開始事業年度(3月決算の場合)から開始されることに伴い、大企業を中心に子会社への貸付金利を見直されるケースが増加してきています。また、信用保証料の取り扱いに関する指針も示されています。新しい指針では、格付けシステムなどを利用し、子会社ごとに格付けを取り、そのリスクに見合った金利を設定することを認めるとされています。

移転価格事務要領の改正「移転価格事務運営要領」の一部改正について(事務運営指針)|国税庁 (nta.go.jp)

一方で、そのような金利を設定するためには、一定のシステム利用料等がかかるためコンサル費用等のコンプライアンスコストが増加することになるため、費用対効果を検討されているところと思われます。税務調査の現場を踏まえて、各企業ごとに見合った事前対応をおすすめしているところです(なんとなくコンサルティングしておいてもらった方がいいのでは?で判断されてるのではなく、制度の趣旨・実務の実態・税務調査の現場感を総合的に判断されたうえでご判断をおススメしています)。是非、専門家のセカンドオピニオンを基に判断していただくことをおススメします。限られた貴重な各企業のご予算を有効活用するため、やるべきかやらないべきかより、今やるべきか・他にもっと有効なテーマはないかをアドバイスするようなケースが多いです。

ポイントとしては、

・国税庁はできるだけ過重なコンプライアンスコストをかけずに対応することをおススメしていることを明言している。

・担当部署からの口頭の説明で、金融機関から得た金利情報が完全に使えないとまでは言っていない。

・現状、金利設定を構築するコンサル法人でも確立された格付けシステムや指針、相手国での取り扱いが明確になっていない状況で、一定程度の理論構築までしか提供できず(必ずしもリスク低減できるわけではない)、とりあえず段階でのサービス提供しかできない(一定程度の課税事案が発生した後でないと実務は固まらない) →したがって、一定の理論構築した後に国税局への事前照会をしておくことが望ましいでしょう


・同じような例を挙げると、出向者較差補填の金額の合理的な較差とは法令上明確にされていないが、なんらかの一定の合理的な較差に関する主張を説明できれば(必ずしも高額なシステム利用料をかけてまで人事データを入手する必要がないケースもある)現場では容認されるケースがある※何も説明できないと寄附金課税として、多額の追徴課税が生じるため、事前準備は肝要です

 詳細については、お問合せください。(改正後の事務運営指針を反映した国際税務調査対応セミナー(社内勉強会編)を昨年秋以降に各社で多数実施しています。寄附金対応や移転価格対応を含め、半日~1日程度で各社の状況に踏まえた勉強会をご提案していますので、お声かけいただけましたら幸いです)


令和5年度税制改正(国際税務関連)

(令和5年度税制改正大綱)

令和5年度与党税制改正大綱 (jimin.jp)

国際税務関連について(P97~)は、CFC税制上の租税負担割合が30%→27%に
変更されています(令和6年4月以降開始事業年度以降)。おそらく米国の子会社
や投資ビークルへの実務煩雑さを考慮してものと思われますが、厳密には租税負
担割合は実効税率とは異なるため、引き続き適切なモニタリングが必要です。
また、従来から情報発信させていただいているBEPS2.0柱2については、最低15
%の最低税率制度が創設され、令和6年4月以降の事業年度に適用されることと
なりました。この税率の判定については、税効果会計の考え方なども採用されて
おり、従来と違った形でのモニタリングが必要であり、連結売上7.5億ユーロ以上
(日本で約1,100億円)以上のグループは、国別報告書・マスターファイルの提出
とともに、こちらの制度にも対応する必要があります。

 


移転価格ガイドブック~自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けて~

国税庁より以下のガイドブックが出されました。移転価格文書を自社中心でご準備しようとされている企業には参考になりそうな文書サンプルが2点掲載されていますので、ご参考になると思います。

https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2016/kakaku_guide/index.htm


移転価格文書化をご検討の方へ

移転価格文書化の検討をされている企業様は、まさに今、どこまで文書化をすべきか各コンサルから上がってきた見積書を検討されている頃ではないかと思います。

連結売上高1,000億円超でグローバル展開されている企業は、ローカルファイルに加えて、国別報告書・マスターファイルを作成する必要があり(日本基準)、今年の3月末までに親会社届出書をすでに提出済かと思います。そして、1年後の提出に向けて準備を進められていることかと思います。

一方、対応をどこまですべきか悩まれている企業は、上記以下の売上規模で関連者取引の金額規模からも本格的な移転価格調査の可能性は低いけれども、文書化の基準になっているケースではないでしょうか。移転価格の文書化を整備しておかないといざ税務調査の際に提出がなければ推定課税の対象となってしまい、多額の追徴課税を受けるリスクが生じるため、そのリスクを下げるために、できるだけ費用をかけずに最低限の文書化をしておきたいといったところかと思います。

私のおすすめは、移転価格の文書化を行うことありきではなく、これを契機として、国際税務に対応できる社内体制の整備(各部署間の連携など)、そして国際税務に関する税務調査に適切に対応する準備のきっかけとして利用していただくことが有用ではないかと考えております。したがって、税務コンサルを採用される際には文書化の作業のみならず、実際の税務調査の現場・社内体制の構築を一緒に考えながらサポートしてもらえるようなコンサルを選定するのが望ましいのではないかと思います(特に文書化という成果物ありきではなく、適切に税務調査に臨むためのアドバイスを行ってくれるかどうかが大切なポイントだと思います。つまり、税務調査で争点になりそうな重要な事項はしっかりと考慮(できれば国際税務全般【タックスヘイブン税制・所得税なども含めて】し、金額的にも影響が少ない論点はどんどん簡略化していくような実務対応力を持っているかどうか)。

特に過去の税務調査で関連者寄附金(出張費用の否認、較差補填金等)に関する追徴課税を受けたことのある企業様は、税務調査の現場でいかに説得力のある説明ができるかによって、税務調査の結果が大きく異なることをご認識されていることかと思います。当事務所ではそのようなケースでの理論サポート(アブセンスフィーの回収、較差補填、ロイヤルティの回収、貸付金利など)を中心にアドバイスしておりますので、ぜひ、一度お問い合わせいただければと思います。


短期間に繰り返して無申告又は仮装・隠蔽が行われた場合の加算税の加重措置の導入( 2017年~)

平成28年税制改正により導入されています。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/kasan.pdf

2017年1月1日以降に法定申告期限等が到来する国税等について、5年前に同一税目で無申告加算税又は重加算税を課されたことがある場合には、無申告加算税・重加算税が10%加重されるというものです。つまり、従来の重加算税35%が45%になるということになります。

実務的な感覚としては、単に加算税が10%アップすることによるキャッシュアウトよりも、国税当局から重加算税を繰り返す企業という見方(レッテル)をされてしまう方がデメリットが大きいように思います。平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されますので、くれぐれも気をつけておきたいところですね(最短で、平成28年9月期【申告期限延長法人から適用開始。)

また、重加算税の賦課要件は、何が仮装隠ぺいに該当するかなど、企業の税務担当者の方などにはわかりにくい点もあるため、身近な国税OBの方にアドバイスを求めるのもよいかもしれません。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/000703-2/01.htm

(2016年12月、事務運営指針一部改訂)

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/kaisei/161201-3/01.htm

※タックスラボのツイッターアカウント@globaltaxlaboとともに、本年も情報発信頑張っていきたいと思います。

(ツイッターは時事ねた・ショートコメントなど、HPブログは税務に対する考え方・告知などを中心に発信したいと思っています)