移転価格事務要領の改正

先月2月に移転価格事務要領の改正が行われ、役務提供取引(親会社から子会社への出張支援等)について、対価を回収する必要がある役務提供の範囲等について、見直しが行われています。事務要領とは、一種の通達(国税内部でのルール)であり、納税者を拘束するものではありませんが、実務的には税務のルールとなっています。

www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/kaisei/180228/01.htm

内容的には、フルコストの5%をマークアップして対価計算を行っている場合(従前はマークアップ不要)には、その計算が認められるというものです。また、株主活動の範囲なども見直されています。税務調査時には、移転価格課税ほど多額の課税には至らないケースは多いですが、海外子会社を設立して展開されている企業グループでは、必ずといっていいほど、この論点が税務調査の論点になるため、十分な対応が必要です。(本年に入ってから、当方が寄稿した昨年の週刊ダイヤモンドの記事を読まれた企業や、以前に当方のセミナーを受講していただいた企業様から、連続でご支援依頼を受けているところで、企業の皆様のご関心の高さがうかがえます。) この論点は、なんとなく専門家に相談するより自社でできそうな気もしますが、事実認定の要素が大きく(親会社・子会社のどちらが負担すべき費用か、対価の設定方法を計算する際の間接費の配賦計算は妥当か等)税務調査の実務に長けた経験のある税理士に相談・依頼するのが得策です。また、他社事例や調査のトレンドを抑えていることにより、不必要な準備時間をかけずに効率的に備えることができるのが、何よりものメリットです。 移転価格文書化の準備が整われた企業(3月決算の企業であれば、本年5月を目途にローカルファイルの作成を終了予定)は、今後、より税務調査で争点になりやすい役務提供取引について、十分な準備を進めておくべきでしょう(経験上、この準備ができているかどうかで、追徴税額は少なくとも数百万円~数千万円、影響してくるケースが多いです。)