【コラム】プロ将棋士の訓練法と国際税務対応(税務調査対応)

藤井聡太さんが、将棋のタイトル戦挑戦(棋聖戦)されていることで、改めて将棋界が盛り上がっていますね。コロナ渦対応で悲観的なニュースが続くなか、明るい話題がテレビに出ることは喜ばしいことかと思います。昨今の将棋界の変化で特徴的なことは、AI(PC)を使った分析です。コンピューターどうしを戦わせ、さまざまな戦型ごとの想定局面(優劣に分岐ができる)の正解手をいかに覚えておけるかということが、プロの中で活躍を分ける違いになっています。つまりAIが点数という形で正解手を見つけてくれるので、これまでの経験や勘に頼った方法ではなく、アナログからデジタルに分析が変化したといえそうです。(※)一般的に、最近のプロ対戦で流行っている約100局程度の想定局面のうち、いくつかの分岐があり、正解・不正解が分かれる手順、数手をいかに正確に暗記できているか、ということが勝負の分かれ目になっているようです。

税務対応と比較してみましょう。これまでの企業税務というと、経験のある経理担当者(課長~部長)が、これまでの経験から、対応コストをみながらこのぐらいまで対応しようということを感覚で決めていたようなことが多かったと思います。そして、対応できていなかった部分やグレーゾーンについては、税務調査の際に、税務当局と阿吽の呼吸で、決着をするようなケースが多かったと思います。ところが、時代が変化してきて、グローバル化のさまざまな変化に企業がついていけないケース・国税側(税法)も対応できていないケースが増えてきており、税務調査はその時のトレンドで行われるようなケースが増えてきています(2000年台初頭の移転価格課税ラッシュ・昨今の包括否認・富裕層に対する一斉課税など)。また、税務調査官も自身で納税公平性の観点から問題あるかどうかを判断して指摘(決着)するような方法から、判断は国税内部の幹部・審理担当者に判断をゆだねるといったケースが増えていると思われます(ある意味、暴走的な調査は減りましたが、融通の利かない硬直的なケースが増えている印象です)

税務対応で必要なことは、国際税務を入門書や入門セミナーで勉強して理解することではなく、さまざまなトレンドの課税事例から逆算して、対応することが必要となってきています。そのためには、セミナー参加を源泉して実践的なセミナーを上手に選ぶか、いろいろな事例を知っているコンサルタントに知恵を借りることが大切かと思います。将棋の例でいえば、過去の体験に基づく経験則による戦いではなく、PCやAIなど外部を上手に活用し、うまく自身にとりこめた人が頂点に立つことでしょう。ただし、歯医者さん選びなどと一緒で、選び方が上手でないと、結局コンサルなんて役に立たないといった思い込みの原因にもなるので、選び方は大切です。つまり、自分で解決することを高めていく時代から、いかに上手に選ぶかを高める時代へ。税理士も、自身で税務知識を高める時代から、いかに専門書・税務ソフトを選ぶか、優秀な他士業とのネットワークを組めるかの時代です。

7月に大阪商工会議所で開催するセミナーでは、寄附金課税・移転価格課税・タックスヘイブン課税・駐在員課税・新興国での課税など、さまざまなケースにおいてこんな場合は税務調査で問題になるので事前準備しておいた方がいいですよ、このように回答できることが大切ですよ、と実践的なご説明をする予定です。毎年、ご参加いただくような企業様もいて、また参加者の方の理解度や経験値も増えてきたと思いますので、ベテランの税務担当者の方がなるほど~と思っていただけるような玄人ごのみの説明も、今年はしっかりとできればと思っておりますので、毎年リピートでのご参加も歓迎です。(※)最近は、クライアントの数を増やす方向ではなく、セミナー等を通じてさまざまな方に知っていただき、税務調査の際に、想定外の課税を受け困った時点で頼っていただければいいという方向に変更しております。とはいえ、事前にきちんと対策しておけば、こんな大きな話にはならなかったのになあと思う事例ばかりですが(税務申告書を作れば良いという時代から、税務戦略をきちんと準備すべき時代へ)