修正申告か更正決定か

コロナ渦で税務調査が止まっていた反動もあり、今年の秋以降は、税務調査が活発に行われているようです。税務調査でみなさまが悩まれる必須のポイントとして、税務当局から指摘された内容について、修正申告に応じるのか、職権による更正決定を受けるのかという点があります。

(修正申告をするメリット)

・納得のいく範囲で是正できることが多い

・事実認定の範囲で交渉できる可能性がある(法令解釈で0か100となるような論点での交渉は難しい)

・調査の早期終結を図ることができる

(修正申告に応じるデメリット)

・一旦修正申告すると、再調査請求・不服審査・税務訴訟等ができない

・理解が不十分なまま修正したことが後で判明することがある(一度修正した内容にしばられて、その後も本来不必要な過大納付を継続する結果となることがある)


(税務当局のメリット)

・調査等の手数を省くことができる(更正処分は難しいが、修正申告ならOKという領域が広い)

したがって、指摘されている内容が十分に納得できる内容であり、かつ、事実認定の内容によって全額ではなく一部の修正申告で済むようなケースでは、修正申告に応じることが合理的であると考えられます。ただし、妥当性のある指摘事項であるかどうかについては、その論点・分野に詳しくないと適切に判断できないことも多く、関与税理士さんの見解が十分に納得できないような場合には、別の専門家にセカンドオピニオンを取るなどして、きちんと分析を行うことが必要でしょう。また、税務調査の決着については、理論的ではなく、税務当局の思惑・慣習なども関係してくるケースもあるため、できれば税務調査の実務に詳しい専門家の意見も参考にされることも良いでしょう。

一方で、

(更正決定を選択するメリット)

・再調査請求、審査請求、税務訴訟と再検討を求める機会がある

・修正申告に応じない場合に、更正決定をするには認定不十分として、税務当局の審理部門から指摘を受け、結果的に指導事項になる(追徴課税はなし)ケースも多い【更正決定に至らない】

・再調査請求以降で、勝訴した場合には、還付加算金等がつく

・一番大きいのは、納得感のある決着となり、その後の実務(申告)においても、納税者の主張に沿った申告をすることができる

(更正決定を選択するデメリット)

・再調査請求以降の手続きは、口頭での主張ではなく、書面により主張となるため外部専門家に依頼するケースが多いため、コストがかかる

このように修正申告に応じる、もしくは更正決定を受ける、双方にメリット・デメリットがあり、その選択を合理的に正しく判断することが納税者にとって大切ですが、そのためには更正決定まで至るかどうかなどを正しく判断するような実践的な知見も大切であり、信頼できてスキルのある適切な代理人選びこそが重要なポイントとなります。

【参考書籍】「クローズアップ租税行政法、税務調査・税務手続を理解する」(酒井克彦)

など、多くの書籍・寄稿等を参考に記載しています。