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デジタル課税の動向

デジタル課税については、大きな2つの改正が行われる予定ですが、移転価格のCBCR・マスターファイルを提出する基準となっている多国籍企業(連結売上約1,000億円超)については、第2の柱の影響が大きくなります。(令和5年税制改正以後に本格導入が予定されています)


ポイントとしては、
 ・実効税率で15%未満となるかが、トリガーとなる
 ・15%未満となった場合は、親会社に追加課税(タックスヘイブン税制と類似)
 ・実効税率の判定は、会計上の利益で計算する(この点が現行タックスヘイブン
  税制と大きく相違しており)、大きな税制改正が来年度以降に予定される
 ・実効税率の判定に、税効果方式が採用される(一時差異や繰越欠損金など)
 ・課税される場合には、一定の控除がされる(支払給与+有形資産簿価の5%)
 ・7.5億ユーロ以上かどうかの判定は、直近事業年度だけではなく、直前4事業
  年度のうち2事業年度で判定する
 ・最低税率制度に関する申告期限は、事業年度終了後「15」月以内とされる
  (現行のCBCRの報告期限は3か月)


週刊東洋経済誌の取材を受けました(富裕層特集)

「事業などに関連していれば認められるが、節税をメインの目的としているものは、ことごとく否認されているようだ」。税務専門家や税法の専門教員の方からすると少し違和感のあるコメントかもしれませんが、従来、なんとなく容認されていたような節税スキームについて、税務当局が厳しく否認(追徴)してきれている動向は事実です。しかし、すべてが認められていないわけではなく、きちんと事前準備をして、税法を周知している専門家が関与し、容認される例が多いのも事実です。納税者や企業の方は、きちんと専門家の力量を見極める眼力が大切です。


ニュースレター発行(2021年9~11月)

当事務所では、毎月クライアント様向けにニュースレターを発行しています(国際税務中心ですが、税制改正の動向や、税務調査記事なども)。
(2021年9・10・11月号)
・租税条約に関する届出書等の電磁的提供
・外国子会社合算税制における株式保有から生じる合算所得について
・納税管理人制度の見直し
その他、税制改正大綱や税務調査の動向など


修正申告か更正決定か

コロナ渦で税務調査が止まっていた反動もあり、今年の秋以降は、税務調査が活発に行われているようです。税務調査でみなさまが悩まれる必須のポイントとして、税務当局から指摘された内容について、修正申告に応じるのか、職権による更正決定を受けるのかという点があります。

(修正申告をするメリット)

・納得のいく範囲で是正できることが多い

・事実認定の範囲で交渉できる可能性がある(法令解釈で0か100となるような論点での交渉は難しい)

・調査の早期終結を図ることができる

(修正申告に応じるデメリット)

・一旦修正申告すると、再調査請求・不服審査・税務訴訟等ができない

・理解が不十分なまま修正したことが後で判明することがある(一度修正した内容にしばられて、その後も本来不必要な過大納付を継続する結果となることがある)


(税務当局のメリット)

・調査等の手数を省くことができる(更正処分は難しいが、修正申告ならOKという領域が広い)

したがって、指摘されている内容が十分に納得できる内容であり、かつ、事実認定の内容によって全額ではなく一部の修正申告で済むようなケースでは、修正申告に応じることが合理的であると考えられます。ただし、妥当性のある指摘事項であるかどうかについては、その論点・分野に詳しくないと適切に判断できないことも多く、関与税理士さんの見解が十分に納得できないような場合には、別の専門家にセカンドオピニオンを取るなどして、きちんと分析を行うことが必要でしょう。また、税務調査の決着については、理論的ではなく、税務当局の思惑・慣習なども関係してくるケースもあるため、できれば税務調査の実務に詳しい専門家の意見も参考にされることも良いでしょう。

一方で、

(更正決定を選択するメリット)

・再調査請求、審査請求、税務訴訟と再検討を求める機会がある

・修正申告に応じない場合に、更正決定をするには認定不十分として、税務当局の審理部門から指摘を受け、結果的に指導事項になる(追徴課税はなし)ケースも多い【更正決定に至らない】

・再調査請求以降で、勝訴した場合には、還付加算金等がつく

・一番大きいのは、納得感のある決着となり、その後の実務(申告)においても、納税者の主張に沿った申告をすることができる

(更正決定を選択するデメリット)

・再調査請求以降の手続きは、口頭での主張ではなく、書面により主張となるため外部専門家に依頼するケースが多いため、コストがかかる

このように修正申告に応じる、もしくは更正決定を受ける、双方にメリット・デメリットがあり、その選択を合理的に正しく判断することが納税者にとって大切ですが、そのためには更正決定まで至るかどうかなどを正しく判断するような実践的な知見も大切であり、信頼できてスキルのある適切な代理人選びこそが重要なポイントとなります。

【参考書籍】「クローズアップ租税行政法、税務調査・税務手続を理解する」(酒井克彦)

など、多くの書籍・寄稿等を参考に記載しています。


ニュースレター発行(2021年7・8月)

(2021年7・8月号)
・デジタル化に関する国際税務の潮流
・外国人が所有する日本の不動産を賃借した場合の取り扱い
その他、税制改正の動向など
最低法人税率15%などについて、新聞紙上等の報道が盛り上がっていますが、そのあたりの動向等を簡単にコメントしています。その他、電子帳簿保存法の改正や試験研究費制度の見直しなどについてもふれています。


税務調査シーズン

緊急事態宣言が明けて、国税当局から税務調査の事前連絡が一斉に入り始めているようです。当事務所では、既存のクライアント様への税務調査対応支援を優先とさせていただいておりますが、これまでプロジェクトベースでご関与があった企業様・税務セミナーにご参加いただきました企業様や税理士さんからの紹介については、優先・優遇して対応が可能です。移転価格の税務調査を受けている・海外子会社との取引について寄附金等の指摘を受けている、タックスヘイブン税制の調査を受けているようなケースについて、特に専門的な領域であり、当事務所の経験値が豊富な分野です。その他法人税全般等の論点についても得意な分野です(特に上場企業や一定規模以上の法人グループ様などが多いです)。


個人事業者・中小企業の皆様は、顧問税理士さんからのご支援依頼・ご紹介があった場合のみ対応しております。何かお困りのことなどございましたら、お問合せよりお願いいたします。


経済産業省税制改正要望(国際税務部分)

https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2022/zeisei_r/pdf/1_02.pdf

39~40ページに、デジタル課税についての影響がまとめられています。本年の年末~(政治の動向によっては来年頭)に公表される税制改正大綱で、今後の方向性が見えてくると思います。しばらくの間は、現行のタックスヘイブン税制の仕組みの中で確認・検討を進められることで良いと思われます。


デジタル経済下における国際課税のあり方

「デジタル経済下における国際課税のあり方について」、経済産業省の研究会の会議資料等が公開されています。https://www.meti.go.jp/shingikai/external_economy/international_taxation/pdf/20210819_2.pdf

ピラー1のデジタル課税については、現在のところ、相当対象企業を限定されそうな方向性ですので、実務に影響があると思われるのはピラー2の方です。コンセプトとしては、タックスヘイブン税制と同様のような仕組みになると想定されますが、既存のCFC税制との整合性、適用対象企業の範囲などについて、しっかりと改正動向を把握しつつ、現在の外国子会社合算税制ととりくんでいただければと思います。


ニュースレター発行(2021年6月)

今月号のテーマは、

・アメリカ合衆国の税務当局との仲裁手続に係る実施取決

です。相互協議によって、国際的二重課税が排除されない場合(例えば、移転価格課税による二重課税調整が妥結できないような場合)に、第三者国の仲裁手続きが可能となります。
 


国際化対応の人材活用

日経新聞7月5日号に、国際税務対応で苦労する企業の特集がされていました。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73505010S1A700C2TCJ000

国際税務を担当できる人材を採用しようとしても、超大手企業であっても苦労されていることが取材されていました。また、大手税理士法人にアウトソーシングしようとすると、多額の費用がかかることが想定されます。事業の選択と集中と同じように、国際化対応にもコツがあり、比較的単純な作業は外注し、海外子会社管理など企業のトップ人材が対応すべきテーマは社内で対応するというものです。アウトソーシングというと難しいテーマを外注するしかないという風に考えがちですが、単純な作業を外注し、一方で困難なテーマを社内化するというのは、立派な選択肢です。国際税務に対応できるいい人が取れない、難しい分野を外注すると多額の費用がかかって予算が取れないと悩んでいるだけではなく、発想の転換も必要かもしれません。

「本社の税務担当は、よりリスクの高い海外子会社の税務処理や税務当局への対応に集中する」(大手商社幹部)という。