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新年ご挨拶

皆様、あけましておめでとうございます。

本年は、セミナー活動・執筆活動・学会活動を中心にまずはアカデミックな分野に注力していきたいと思います。また、国際課税の世界ではBEPSを中心に激動が予想されるところですが、企業の皆様のお役に立てるようにある取り組みを始めようと計画中です。

本年が、皆様にとって良い一年になりますように。

 

八幡谷 幸治


セミナースライド

税務セミナーの講師を担当します

来年2月下旬に税務セミナーの講師をさせていただくことになりました。
テーマは、「(国際)税務調査における主要論点の実務対応です」。
丸一日のコースですので、しっかりと準備して、充実したセミナーをさせていただきたいと考えております。 また、元国税調査官としての視点を取り入れ、どのように説明すれば税務調査で効果的な反論ができるのか、ということをテーマにしていますので、国際税務以外の場面でも参考になると思っています。
関西人らしく、笑い(小ネタ)を仕込んでいき、飽きさせないセミナーにしたいと思います(^^)/。

 

 


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セミナー参加(国際税務戦略、国際税務研究会)

昨日、税務研究会(国際)さんの研修で、国際税務戦略についてのセミナーに参加しました。講師は、高橋宏幸先生です。高橋先生は、国税庁のキャリア採用の方で、国税庁勤務など国際課税の最前線で陣頭指揮を取られた方です。税理士になられてからは大手税理士法人でのご経験や海外での勤務経験もなされているようです。セミナーでは先生のご経験された豊富な経験を基に、国際税務について税務面での制度面の解説に加え、日本企業がこれから進むべき戦略(人事制度、文化の違い等)について、方向性を示唆されていたのが印象的でした。

私も国際税務(戦略)というのは、単に税務のテクニカルな問題だけではなく、企業が進むべき方向性(企業グループ再構築、海外販売戦略、人事制度等)を、たんに税務の面から検討したものであると捉えているため、大局的な見地から企業をサポートする必要があると考えています。つまり税務の有利不利だけで判断するのではなく、営業戦略・人事制度・企業ブランド構築などとともに、税務も一つの重要なパートとして検討する必要があるのではないかと思っています。例えば、企業の税務戦略をご担当される部長クラスの方々には、会計税務の実務的な知識のみならず、役員クラスの見識・大局観が今後求められていると思います。そのような方々から直接アドバイスを求められる税理士は、当然税務の知識のみならず、常識の範囲内でざまざまな見識を深めておく必要があると考えています。

また、もう一つ印象的だったのが最後の税務調査対応のパートで、国税調査官が置かれている現状について熱く解説されていたのが、印象的でした。私も以前から、国税調査官が税務調査で成績を上げるために必死になって厳しい調査を行うマインド(モチベーション)はどこからくるのだろうと、疑問に思っていました。先生がおっしゃていた「公務員であるため給与等待遇には大きな差がつかないので、優秀な人に頑張ってもらうためには、昇進等で差をつける必要がある。そのため、目に見える形で成績が出る税務調査で、各調査官が頑張るモチベーションが生まれているのではないか」という示唆は、なるほどと思いました。

最後に、国税庁等でご活躍されていた諸先輩が民間でも活躍されているのを拝見して、嬉しく思いました。頑張る人はどこに行っても頑張るので、私自身も諸先輩や同期・後輩の皆さんに恥じぬよう頑張っていきたいと、改めて思いました。


法人税の調査事績(発表報道より)

今月、大阪国税局より法人調査事績の発表がありました。特徴的なのは、実地調査件数が前年度対比約90%でということで、調査件数の減少が見られていることです。これは改正国税通則法の影響で、調査手続きの厳密化等により内部手続きが増加したことによる影響があるものと思われます。
https://www.nta.go.jp/osaka/kohyo/press/hodo/h26/chosa_jiseki/01.htm
ただ国税当局としても税務調査がゆるくなったという印象を持たれることは、望んでいないと思われますので、今事務年度以降、税務調査の件数が通常どおりに戻っていくものと予想されます。実際に、本年7月以降活発に調査が行われている様子がうかがえます。
また、法人税の非違があったのは調査件数のうちの約7割ということで、調査があれば7割はなんらかの修正申告が発生していることになります(3割のうちには、他の税目「消費税・源泉所得税・印紙税」の非違がある場合も含まれます。)。

以前、調査実務の経験をしていた者からの感想とすると、対前年の数値等にこだわらず「悪質な納税者に対しては厳正な調査を、きっちりとコンプライアンスの意識が高い納税者に対しては指導を中心とした穏やかな税務調査を行う」のが、国民感情に合致する(社会から期待されている)のではないかと思います。
更正割合等の係数にこだわり、安易な期間損益(売上繰延や棚卸計上漏れ)で税務調査を終わらせるのではなく、やるべきことをきっちりと行うのが税務調査官の務めではないかと考えております。


セミナー参加(中国投資、国際税務研究会)

昨日は、税務研究会(国際)さんの研修で、中国投資・コスト回収のセミナーに参加しました。講師は、PWCの梁瀬先生です。いつもよりは少し少ないかもしれませんが、70~80名の参加者がいらっしゃいました。
私の経験上、在阪企業の海外進出は、中国だとすっかり生産活動等が安定してきてはいるが、逆に人件費等が高騰してきたり、日中間の情勢が不安定だったりしているので、別の第三国への進出に変わってきているように把握しています。以前から人気のあるタイの他、近年はベトナムへの進出が相次いでいました。ベトナムに関しては少し意外な気もしますが、まだまだ発展途上の要素が多く、税務執行も不安定・不完全な部分はありますが、人件費の低さ・親日的なところが日系企業にとっては魅力的ではないでしょうか。

セミナーに戻りますと、中国税務の難しさはやはり執行上の不安定さ(法律・規定どおり)に執行がされないケースがあるという点でしょうか。例えば、税務上の一定の処理を事前に完了しておかないと日本への送金が許可されないということが特徴的です。このあたりしたたかといいますか、さずが三千年の国の知恵というか、日本も見習うべき点はあるのでは。例えば、一時期外資系のファンドが不良債権処理で大きな利益を上げたものの、日本で税金を負担することなく海外に資金を逃がしてしまったことがありました。その当時の税制では課税できず、後に税制改正で整備された経緯があります。このあたりも送金処理のところで手をうっていれば、もっと早く税制改正等が進んだ可能性もあるのではないかと思います。儲けた方々にきっちりと税金を負担していただくのが、税法の原則です。(もちろん海外からの投資により、地価等の回復が早く進んだという面はありますので、日本国としてメリットは受けていると思いますが。)

中国税務の動向で注目すべき点は、2014年7月に中国当局から出された通達で、外資企業のサービスフィー及びロイヤリティに関する状況調査をするように指示が出ていることです。期間は2004年から2013年の10年間で、例えば海外のタックスヘイブン国へ支払っている場合や経済的実質が不明確な場合、状況調査にとどまらず、否認される可能性もあるようです。
(参考) http://www.pwc.com/jp/ja/taxnews-international-china-hong-kong/china-jun-2014.jhtml

セミナーを通して受けた感想は、セミナーの中では基本的には日本では法律どおりに税務執行が行われるが、中国では調査官のさじかげんで執行が決まってしまうため注意を要するといった論調でした。もちろん対比論でいうとそのような指摘も正しいとは思いますが、日本の税務執行が本当に法律どおりに執行されているかどうかという点については、疑問に感じています。民間で実務経験のある税理士さんは皆さん気づいていることですが、建前は法律・通達どおりの執行ということになっておりますが、現実は異なる点が結構あります。このあたりをどう把握して、日常の税務処理を進めていくことができるかが、税務担当者及びそれをサポートする税理士の腕の見せどころと思います。

 


サービスメニュー追加

その他サービスに、(期間限定、無料)税務図書コンシェルジュサービスを追加しました。
専門分野は国際税務・税務調査対応に思い切って絞り込む一方、サービスの提供方法は「よろずや」方式でいろいろなコンテンツ・手法を検討しています。


セミナー参加(海外駐在員、国際税務研究会)

本日は、税務研究会(国際)さんの研修で、藤井先生のセミナーに参加しました。藤井先生は、海外赴任者の税務・社会保険等の第一人者として有名な方です。研修会場には、100人以上の参加者がいらっしゃいました。

この方の人気を分析すると、女性ならではのきめ細やかな確認・分析と、熱心に講義されている姿勢が素晴らしいと思いました。また、税務・社会保険の専門ということで、税理士だと税務だけ・社労士だと社会保険だけになってしまうのですが、三菱UFJリサーチという民間企業(非税理士事務所)ということで、税務と社会保険の両方をスコープに入れており、企業の人事部にとってはすごく実務的に助かるということが人気のある要因ではないかと思います。私も社会保障協定のことは知っていましたが、年金・健康保険・労働保険等による違い、国による年金加入期間の通算の違いなど、非常に参考になりました。
また、以前から少し気になっていた租税条約の短期滞在者免税規定がワークするかどうかという論点で、クリアーになった点があり、その点も非常に良かったです。


また、セミナーの中で「制度は本来こうあるべきだけれども、実務的にはこうしているケースが多いです。おすすめしているわけではありません」という内容が、非常に素晴しいと思いました。別のセミナーで弁護士の関根先生が講演で話されていたのですが、「税法理論」と「税務調査理論」は違うと。つまり税法をどれだけ細かく分析して理論的な回答を導びくプロセスと税務調査でクリアーするためのプロセスは違うと。このあたりをきっちりと整理されたうえで、情報をシェアされているところが、人気の原因とも思いました(「正しく処理した方が後々のことを考えると良いです」という説明が前提です)。

Yawatax(弊事務所)では、「税法理論」を抑えたうえで、「税務調査理論」(つまり税法どおりの実務をしていなくても、調査でクリアーになれば一応OK)という分野を極めていきたいと考えています。それが理論なのかどうかは議論の余地はありますが、究極的にクライアントはそれを税理士に求めていると思っています。そこに要求されるのは、「経験」「他社事例」「柔軟な思考力」「大局観」が大切ではないかと考え、自己研鑽に励みたいと考えています。


【コラム】できる税理士

大手税理士法人や過去の税務調査等で、いろいろな税理士さんをみてきました。数日会っただけの人を含めると数百人でしょうか。私になりに「できる税理士さん」とは、

  1. 知的好奇心を持っていること(単なる勉強好きではなく、クライアントのビジネスモデルを理解しようとすること・世の中の動向を理解すること【アンテナをはっておくこと】が重要。)
  2. 謙虚であること(知らないことをしったかぶりしないこと。いい加減な回答をクライアントにするとご迷惑をおかけすることになります。)
  3. クライアントのために尽くせること(クライアントが何を重要視しており、何に不安・不満を持っているかを察知できること。適正利益をいただいた上で、クライアントのために喜ばれる仕事に誠心誠意を尽くせるが真のプロフェッショナルでは。)
  4. バランス感覚を持っていること(夜中遅くまで働いても、自分の精神・肉体が元気でないと、つまらない見落とし等をして、クライアントに迷惑をかけてしまいます。また、金額的に重要でない論点について、必要以上に検討するなど、大局観を養う必要もあると思います。)
  5. 経験を積んでいること(税理士業は、資格を取得した時点で税理士としてやっていけますが、税務の世界は奥深いため、ある程度の見識を得るには、少なくとも5~10年の経験が必要かと考えています。)
大手税理士法人では、それぞれ長所を持った人達の姿勢等を学ぶことができ、貴重な経験になりました。

※①他の事に興味がいき、自己研鑽を怠ってしまう。②知ったかぶりをしていまい、誤魔化してしまう③追加業務を依頼すると、すぐに追加料金を請求する④遅くまで働いて、頑張った気になる

ようにならないように、自分を戒めながら、自己研鑽に励みたいと思います。

別の機会には、「できる調査官」について、私見を記載してみたいと思います。少し税理士とは違うのではないかと思います。


研修参加(税務研究会)

昨日は、税務研究会さん主催の研修で、佐藤信祐さんのセミナーに参加しました。午前は、組織再編を活用したタックスプランニング、午後は、事業承継のための組織再編の活用です。佐藤先生は、トーマツご出身で日本でも数少ない組織再編税制の第一人者です。

感想は、少し面識があることがあり贔屓目かもしれませんが、これまで受けた税務セミナーの中で一番良かったと思いました。組織再編税制の検討をほとんどやったことがない方については、やはり再編税制の応用編の話が多いので、理解できない部分も多かったと思いますが、実務でやったことがある人にとっては、悩ましい論点についてさまざまなコツを知ることができ、有用だったと思います。6時間がこれほど短いと感じたセミナーはじめてでした。

法人税の組織再編税制については、主要な論点はほぼつぶれてきた感もがあります。これからは事業承継(株価評価)の点で、まだまだ検討の余地があると思います。そもそも、個人(会社オーナー)にとって非常に悩ましい株価評価(相続税)が、通達ベース(×法令)で決まっていることに問題の所在があると感じています。

個人課税の場合、法人税と違いPLがないので、さまざま割り切りがでてしまうのは仕方ないと思います。しかし、例えば、日本法人株式は類似業種等で工夫の余地があるが、外国法人株式は一律純資産評価など、税務専門家以外の一般の方はなぜ、こんなに外国子会社の評価が高くなるんだ!と納得できないですよね(実務的には比較対象が取れないのでやむを得ないと思いますが)。さまざまな事業承継の優遇税制を作る前に、納得感のある制度を再構築してほしいと考えます。(海外には相続税がない国も多いですが、ある国ではどのように株価評価しているのか気になります。M&Aなんかで使っているDCFや収益還元などの予想が入った数字で認めてしまっているのでしょうか。) 

また、午前のセミナーの中で、包括否認規定の話がありました。ヤフー裁判の地裁判決では、「経済合理性がない」「制度趣旨に反する場合」には、包括否認規定が発動すると判示されています。なかなか興味深いテーマで、税務専門の弁護士・税理士は最近このテーマでもちきりです。当局内は、包括否認規定のことを「伝家の宝刀」と呼んだりします。すなわち、鞘から抜いてしまったら意味がなく、抜くぞ抜くぞ威嚇して、牽制させることに意味があるというのが目的という解釈ですね。 簡単にはコメントできないテーマなので、詳細な検討は、別の機会に記載したいと思いますが、国税出身者の感覚(私見)からすると、行為のほとんど(半分以上)が税金を削減するために行われた行為は包括否認規定の対象になって良いと考えています。税理士さんの多くが考えているのでは、税金目的100%・その他形式だけの理由しかない場合のみ、包括否認の対象となるべきですね。理由は、租税法理論と課税実務は異なからと考えています(租税法律主義【法的安定性】と租税公平主義の均衡)。


書籍(国際税務)

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昨日、書店で見かけたので購入してみました。10年ほど前、国際税務について触れている書籍等は少なかったので、古橋さんが出されていた「納税者反乱」や橘玲さんのシリーズは熟読していた覚えがあります。当時は、こんなに国際税務と縁が深くなるとは思っていませんでしたが。

今は、図解シリーズ(大蔵財務協会)からも国際税務に関するものが出版されるようになり、ずいぶんメジャーになったものだと思います。

内容は、最近の国際税務全般について、まとまって記載されており、国際税務初心者の方には是非ともおすすめです。筆者の古橋さんは、元々EY(アーンストアンドヤング)の方だったんですね。

最後に出国税について論評(予測)されているあたり、非常に興味深く感じました。含み益に課税するとなると、組織再編の含み益課税のようなものでしょうか。法人のオーナーが有する株式等は、一番、ターゲットになりそうですね。所得区分は性質から判断すると、譲渡所得でしょうか。個人課税部門ではなく、資産課税部門の所掌範囲ですね。出国する前に課税を完結するとなると、かなり陣容を整備する必要がいりそうです。おっと、出国税に深い入りしすぎそうなので、このテーマはまた別で。

基本的には法人も個人もどんどん海外に進出すべきという論調で記載されています。

私の経験上では、進出していくべきではあるものの、やはり失敗事例等を目にすることがありますので(当局~ファーム時代)、やるべきではあるものの、細心の注意をはらい十分信頼できるパートナー・専門家とともに行動すべきといったところでしょうか。

最近よく耳にして共感するところがあるのは、税金だけ(節税だけ)で行動するのは、やはり失敗の原因になることが多いということなんですよね(相続税対策、海外移住、海外進出など・・・)。詳しくは、また別の機会に。